弊社のプロジェクトマネジメントの考え方をまとめました

弊社におけるプロジェクトマネジメントの考え方

プロジェクトとは、一定の期間内で目標を達成するために、通常の事業とは異なる視点で組織やチームが編成される活動を指します。弊社におけるプロジェクトマネジメントおよびプロジェクトの遂行に責任を持つプロジェクトマネージャーの役割について整理しています。

これからプロジェクトマネージャーとして活躍したいという方にも是非参考にしていただければと思います。

 

内容

  • 基本知識:プロジェクトマネジメントの主な方法論/フレームワーク
  • プロジェクトマネジメントの近年のトレンド
  • プロジェクトマネージャーの一般的な役割
  • プロジェクトマネージャーはまず何をするのか
  • プロジェクトマネージャーの基本的な心構え
  • プロジェクトマネジメントのポイント

 

基本知識:プロジェクトマネジメントの主な方法論/フレームワーク

プロジェクトの形態は多岐にわたり、都市計画のような大規模なものから、特定業務の改善といった小規模なものまで存在します。これら様々なプロジェクトを整理し、統一的な考え方で管理するために、世の中には多くのフレームワークが存在しています。代表的なものとして、PMBOK(プロジェクトマネジメント知識体系)やCMMI(能力成熟度モデル統合)などがあり、それぞれに特有の特徴があります。

プロジェクトを成功裏に進めるためには、こういったフレームワークが役立ちます。しかし、現実的には教科書通りに進めることは非常に難しく、結果としてマネジメントにかかる工数が増大してしまうことが多くあります。そのため、プロジェクトマネージャーはさまざまな制約や要因を考慮した上で、効率的にプロジェクトを遂行するための方針を立てる必要があります。具体的には、ビジネスモデルや事業の特性、組織上の制約、チームメンバーのスキルセット、過去の経験から得た課題などが、プロジェクト運営に影響を与えます。

コンサルタントやこれからプロジェクトをリードしたいと考えている人にとって、これらのフレームワークをすべて完全に理解する必要はありませんが、基本的な知識はプロジェクト運営における共通言語として重要です。標準的なフレームワークを理解することで、最低限の管理手法を身につけ、効果的なプロジェクトマネジメントが可能になります。

 

プロジェクトマネジメントの方針を決めるための要素

 

(参考)代表的なプロジェクトマネジメントのフレームワーク

  • PPM(Project Portfolio Management)
    会社全体に存在する複数のプロジェクトを総合的に捉え、経営にどう影響しているか、また、会社の方向性に沿った形で資源が投資されているかを「可視化」し、「分析」することで、組織全体の効率化を実現する管理手法です。
  • CMMI(Capability Maturity Model Integration)
    組織のプロジェクトマネジメント力(プロセス改善能力)を5段階で評価し、客観的な評価に基づいてプロセス改善を行うためのゴールや必要なプラクティスを整理したフレームワークです。
  • P2M(Project & Program Management)
    プロジェクトとプログラム(複数のプロジェクト)をマネジメントし、個々のプロジェクトの連携や相互作用を統合的に管理する手法です。米国発のPM知識体系ガイド「PMBOK」と、ヨーロッパで普及しているPM能力体系ガイド「ICB」の要素を組み合わせた国産のフレームワークです。
  • PMBOK(Project Management Body Of Knowledge)
    米国プロジェクトマネジメント協会(PMI)が提唱するプロジェクトマネジメント知識体系ガイドです。プロジェクトマネージャーが必要とする知識要素を体系化しており、現在の第7版ではプロジェクトマネジメントの原則と8つのパフォーマンス領域に整理されています。

 

プロジェクトマネジメントの近年のトレンド

PMBOKは第7版が2021年に登場し、第6版と比較して大幅に軽量化され、構成が変更されました。第6版では10の知識領域と5つのプロセス群として定義されていた構成が、第7版ではプロジェクトマネジメントの原則と8つのパフォーマンス領域へと再編されました。第6版では、計画通りにプロジェクトを推進することが重視され、遅滞なく進めるためのプロセスに重点が置かれていましたが、第7版ではアジャイル型プロジェクトが強く意識されています。そのため、第6版が精度の高い計画策定に重きを置いていたのに対し、第7版では状況に応じて柔軟に対応できるよう、より概念的な知識を提供する方向に変化しました。

 

PMBOK第6版 vs 第7版

 

アジャイル方式の開発スタイルは、2001年頃から広く認知されるようになり、2021年のPMBOK第7版での変更は、アジャイル型プロジェクトが単なる認知を超えて実践的な考え方として定着してきたことを反映しています。PMBOK以外の各種フレームワークも、社会の動向に応じて徐々に変化しています。

このような変化から読み取れる重要な点は、単にアジャイル型のプロジェクトに対応することだけではなく、アジャイルの一般化を含む社会環境の変化に適応していく必要があるということです。社会環境はアジャイルというキーワード以外にも絶えず変化しています。プロジェクトマネジメントを考える上では、こうした社会の変化を敏感に感じ取り、適宜プロジェクトに反映させることが求められます。

(参考)近年のトレンド

  • アジャイル方法論の普及・一般化
    アジャイルを採用するプロジェクトが増加し、より迅速かつ柔軟なプロジェクト形態が期待される。
  • リモートワークの定着
    パンデミックを契機にリモートワークが広まり、仮想コミュニケーションツールやコラボレーションツールの重要性が増大している。
  • AIと機械学習の活用
    プロジェクトのスケジューリング、リスク管理、リソース割り当てなどにAIと機械学習が活用される場面が増加している。
  • デジタル トランスフォーメーション
    テクノロジーとデジタルツールの導入により、プロジェクトの管理や実行方法が変化している。
  • 持続可能性の重視
    持続可能性に関する考慮事項をプロジェクト管理に組み込むことが、今後ますます重要になる。

 

プロジェクトマネージャーの一般的な役割

プロジェクトマネージャーは、プロジェクト遂行に関する基本的な権限を持ち、プロジェクト目標の達成に向けたマネージャーおよびリーダーとしての責任を担います。原則として、以下のような役割を果たします。

  • プロジェクトのスコープ、目標、および成果物を定義する
  • プロジェクト計画を作成する
  • プロジェクトメンバーにタスクと責任を割り当てる
  • プロジェクトの進捗状況を把握し管理する
  • プロジェクトの予算とリソースを管理する
  • プロジェクトのステータスとリスクを利害関係者に報告する
  • 必要に応じてプロジェクト計画を調整する
  • プロジェクトの成果物が品質基準を満たしていることを確認する
  • プロジェクト終了後にレビューを実施する

プロジェクトマネージャーはまず何をするのか

プロジェクトマネージャーに任命されたら、まずプロジェクトの規模や体制、その他さまざまな要素を考慮し、どのようにプロジェクトを進め、どのレベルで管理するかを検討する必要があります。また、その前提として、プロジェクトに期待されていることを正しく理解し、プロジェクトの目標や制約事項、重視すべきポイントを把握することが重要です。

プロジェクトマネージャーの役割は、単にチェックリストを作成し、プロジェクトメンバーにタスクを割り振ることではありません。プロジェクトによっては、会社の存続を左右するようなものもあれば、社員のスキルアップが目的となる場合もあります。プロジェクトマネージャーは、プロジェクトの目標を誰よりも深く理解する必要があり、その理解の深さがプロジェクトの成功を大きく左右します。

 

プロジェクトの全体的な進め方や管理レベルを決定する際には、次のような要素が影響します。例えば、大規模なシステム開発プロジェクトでは、多層的な組織構造が必要となり、メンバーの入れ替わりや将来的なメンテナンスを見越して、必要なドキュメントをしっかりと作成する必要があります。一方で、少人数で進行する構想策定や戦略立案プロジェクトでは、説明責任を果たすためのドキュメントは重要ですが、各メンバーの裁量を最大限に高めることがプロジェクトの成功に繋がる場合もあります。

 

 

プロジェクトマネージャーの基本的な心構え

プロジェクトマネージャーは、プロジェクトの目標達成に責任を持ち、複数のチームやメンバーで構成されるプロジェクトを率います。多くの事業と同様に、リーダーであるプロジェクトマネージャーの思考の幅や行動力、品質へのこだわりが、最終的にチーム全体の限界点を定めることになります。

プロジェクトマネージャーは、しばしばさまざまな専門分野のプロフェッショナルをメンバーとして迎えますが、当然ながらすべての専門領域に精通していることは珍しいです。むしろ、専門知識を持つメンバーが、プロジェクトの目標達成において重要な示唆を持つことも十分にあり得ます。時には強くリードしながらも、メンバーの意見を柔軟に取り入れるというバランス感覚と手腕が、プロジェクトマネージャーには求められます。

さまざまなプロジェクトマネジメント手法を理解すること自体は非常に重要ですが、それだけでプロジェクトを成功に導くことはできません。リーダーシップが欠けているプロジェクトは失敗に陥りやすく、特に近年ではPMBOKに見られるように、リーダーシップがプロジェクトマネジメントの重要な要素として明確に位置づけられています。

また、プロジェクトマネジメントの理論は、プロジェクトを効率的に進めるためのテクニックの集合体とも言えますが、リーダーシップはその延長線上にあるものであることを理解する必要があります。プロジェクトマネージャーとしてリーダーシップを発揮するためには、これらの方法論に加えて、リーダーシップそのものについても学ぶことが重要です。

 

 

 

近年、「サーバントリーダーシップ」という言葉が注目を集めていますが、この概念自体は、1970年にロバート・K・グリーンリーフが発表したエッセイ「The Servant as Leader」の中で初めて提唱されました。最近になって再び注目されるようになった背景には、働くことに対する価値観の変化や、先行きが不透明で将来を予測することがますます難しくなってきた状況があると考えられます。

このようなサーバントリーダーシップの考え方以外にも、リーダーシップをテーマにした書籍や論文は数多く存在します。リーダーシップの概念は、社会情勢や働き方の変化に応じて進化していくものであり、プロジェクトマネジメントと同様、決まった正解があるわけではありません。そのため、常に新しい知識を探求し続ける必要があります。

 

プロジェクトマネジメントのポイント

プロジェクトマネジメントは、多岐にわたるスキルと洞察を要求する複雑な領域です。いくつかの具体的な重要ポイントを紹介します。

 

1. 見積り作成とプロジェクトスコープの精度

見積り作成はプロジェクトの骨格を形作るプロセスとなります。ここで言う見積はお客様への契約前に提示する見積りだけを指すのではなく、プロジェクト全体の設計を行っていく上で都度行なわれる作業を含みます。

見積りが正確であることは、プロジェクトの計画と実行の成功に直結します。しかし、見積りの作成は多くの不確実性を含む作業であり、プロジェクト開始時点ではすべての詳細が明確ではないことが一般的です。このような状況下で見積りを作成するためには、仮定や推測を行い、それを体系的に構造化するスキルが必要となります。見積りの精度はプロジェクトのリスク管理に密接に関連しています。PMBOKでもこの重要性は強調されており、見積りはリスク評価と不確実性の管理のための基礎となります。

また、見積り作成はプロジェクトスコープを決定づけるプロセスとも言えます。プロジェクトスコープが適切に管理されていることはプロジェクト遂行のために必須であり、目的を達成するために利害関係者の十分な納得が得られる状況を作り出すことが必要となります。

 

2. チーム編成

プロジェクトの成功は、言わずもがな人材の配置とチームの組成によって大きく左右されます。チーム編成は、プロジェクトマネジメントの中でも最もクリティカルな要素の一つであり、各メンバーの専門性、スキルセット、ストレス耐性を慎重に考慮する必要があります。また、チーム内の多様性は、新たな手法の発見や問題解決能力を高めるために不可欠です。

Belbinのチームロール理論では、効果的なチームは異なる「ロール(役割)」を持つメンバーで構成されるべきであると提唱しています。たとえば、「コーディネーター」「プランナー」「フィニッシャー」などの異なる役割がチーム内でバランス良く配置されることが、プロジェクトの成功に繋がります。また、心理的安全性の確保も重要となります。様々な研究でも心理的安全性が高いチームほど、失敗を恐れずに発言し、結果として革新的な解決策を生み出すことが明らかにされています。

プロジェクトでは「多様な価値観を持つ個々の集合」としてのチームをマネジメントするという考え方が重要となります。これは、チーム内の異なるバックグラウンドや視点がもたらす効果を最大限に活かすためです。多様性は新しいアイデアや解決策を生む原動力となりますが、同時にコミュニケーションの障壁となる可能性もあるため、プロジェクトマネージャーには、各メンバーが自分の言葉でプロジェクトの目標や課題を説明できるようにすることが求められます。これにより、チーム全体の目標への共通理解が深まり、協力関係が強化されます。

 

3. 品質へのこだわり

プロジェクトをリードする存在のこだわりを超えてチームがそれ以上のパフォーマンスを出すことはまずありません。品質管理は、プロジェクトの成功を左右する非常に重要な要素であり、プロジェクトマネージャーは、プロジェクトの目標を達成するために、コストやスケジュールを守ることはもちろん大切ですが、品質を犠牲にすることなく進行する方法を常に模索する必要があります。品質に対する妥協のない姿勢は、単に最終的な製品やサービスの完成度を高めるだけでなく、プロジェクト全体の信頼性を向上させることに繋がります。

特に、顧客やクライアントに対して高い品質を提供することは、彼らの期待に応えるだけでなく、長期的な信頼関係を築くための基盤となります。また、プロジェクトチーム内でも、品質に対する意識を高めることが重要となります。すべてのメンバーが品質に対する責任を共有し、高い基準を持って作業に取り組むことで、プロジェクト全体のパフォーマンスが向上します。プロジェクトマネージャーは、適切な品質管理プロセスを導入し、チーム全員がその重要性を理解し、実践できるようにリーダーシップを発揮することが求められます。

 

4. ツールの積極的な活用

現代のプロジェクトマネジメントでは、適切なツールの活用が成功の鍵を握っています。プロジェクトの複雑さが増す中で、ツールの選定とその活用は、プロジェクトの効率を大幅に向上させるために不可欠です。ツールは、情報の一元管理や進捗状況の可視化、タスクの割り当て、コミュニケーションの円滑化を支援します。

プロジェクトマネジメントツールに限らず近年SaaS型で提供されるツール類は無数にあり、その選定と導入は、技術的な側面だけでなく、組織の文化やプロジェクトの特性を考慮する必要があります。たとえば、アジャイルプロジェクトマネジメントツールは、迅速な変更対応とチームのコラボレーションを重視するプロジェクトに適しています。一方で、ウォーターフォール型のプロジェクトには、伝統的なツールが適している場合があるため、最適なツール選定を行います。

また、ツールの効果的な活用には、ツール自体の機能を理解することが重要ですが、より重要なことはツールがプロジェクトの共通言語のように機能していることです。ツールはプロジェクトのサポート役に過ぎず、ツールの使用が目的化してしまうと、本来のプロジェクト目標が見失われないようにする必要があります。

 

5. バランス感覚とあいまいさへの対応

プロジェクトマネジメントにおけるバランス感覚とは、リソース、時間、品質、コストの間で最適なトレードオフを見つける能力と言えます。プロジェクトは常に動的な環境の中で進行し、予期しない事態やあいまいな状況が発生することは避けられません。このような状況で成功するためには、柔軟で迅速な意思決定が求められます。

ダイナミックケイパビリティ(Dynamic Capabilities by David J. Teece、Gary Pisano、Amy Shuen)は、「急速に変化する環境に対処するために、企業が内部および外部の能力を統合、構築、再構成する能力」であり、組織の現在の業務に関係する運用能力または「通常の」能力とは異なるものとして考える必要があります。これは、企業やチームが変化する環境に適応し、競争優位を維持するために必要な能力を指し、プロジェクトマネージャーは、これを実践するために、あいまいさに対処するための柔軟性と適応力を持つことが必要となります。

 

弊社のプロジェクトマネジメント(PMO)支援について

弊社のPMO支援実績とサービスの概要については以下にてご紹介しています。

https://groots.co.jp/services/project-management

サービス内容やご支援に関する詳細な情報をご希望の場合は、弊社ホームページのお問い合わせフォームよりご連絡ください。

 

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